2022年7月11日月曜日

歌詞に地名を出すことについての個人的見解

タイトルに地名が入っている曲をたまに見かけますが、肝心の歌詞内の風景描写が稚拙で「わざわざ具体的な地名を出す意味あるのか?」と思うことが多く、いつもモヤモヤしています。

つい最近ですと●●●(とある有名アーティスト)さんが「明大前」という曲を出してましたが、歌詞内の風景描写が「踏切がある」「踏切の向こうにアパートがある」くらいで、どこでもええやんと思うのです。こういうローカルな地名が出てくる場合は大体作者の個人的な思い入れがあって採用したとは思うんですが、だったら余計に、その場所をその人かららだけ見える固有の景色として描写してほしくて、「踏切がある」「踏切の向こうにアパートがある」だけの描写は不十分すぎて、料理に例えれば、香り、旨味、深み、具がないラーメンのような気がするのです。


例えば「明大前」の歌詞だけを見て「この曲のタイトルになっている地名を当ててください」と言われたときに、候補となる街が何百・何千と出てきてしまう。つまり“明大前である必然性”が作者の中にしかなく、リスナーには無いですね。ある意味で置いてけぼりということです。


作詞するときに大事なのは、自分以外がスルーしていた事に自分ならではの価値を見出して、それを提示することだと思っているのですが、この「明大前」に関してはその真逆。明大という地名の持つイメージ・各々が抱くイメージに乗っかってるだけで、「明大」という場所に対する、そのアーティスト独自の眼差しを提供していない気がするのです。


椎名林檎「歌舞伎町の女王」はその土地特有のカルチャーに焦点が置かれているので、地名を出す意味があるのですが、それは結構少数派です。この歌詞も独自の眼差しを提供しているとは到底言えないのですが、少なくとも、その地名を出す必然性はあります。「明大前」にはそれすらない。


恐ろしいのは、この「明大前」は日本の音楽の中では、だいぶ良くできたマシな歌詞だということです。日本の音楽界にはこれより全然酷い「個性が一切ない」「そもそも成立していない」みたいな歌詞が氾濫しています。別にありきたりな景色を描写するなというわけではありません。してもいいと思います。ただ、そのありきたりな描写に固有の地名を付け加えることで、凡庸な風景描写なのを隠すために固有の地名のイメージを利用して少しでも深みを出すための使われ方が多く、そのテクニックが非常に稚拙で、曲の良さを台無しにしていると思うのです。嫌な言い方をすれば「地名をファッション感覚で軽い気持ちで使っている」ということです。


偉そうに言っていますが、僕も歌詞における地名について深く考えるようになったのはここ4~5年くらいです。現在、僕は地名を出さないで済むなら出したくなくて、「アニメーションウォッチャーズ」という曲では、「秋葉原」という文字を出さないように「電脳都市」と言い換えていますし、これだとアルバム全体のテーマである「1990年代」という意味合いも付け加えられます(オタクの街になる前の秋葉原)。というか単純に曲名に「アニメ」が入ってて、歌詞に「秋葉原」が入っていたらつまらなすぎますよね。


逆に地名を出さざるを得ないときにしょうがなく出すこともあって、代表的なのは「エグすぎる」の「新宿」です。「俺は新宿でお笑いを観る」はもともと「俺は地下インディーズお笑いを観る」ということを言いたいのですが、「地下インディーズお笑い」というワードは強すぎる&長すぎて、ほかのパートにまで影響を及ぼしてしまうので使うのは避けたかったのです。そこで東京でもっとも地下ライブが行われている地帯(新宿の歌舞伎町周辺)の意味合いで「新宿」というワードを出しています。ここははっきり地名を指定しないと全体に響きます。渋谷だと∞ホールのイメージ、浅草だと演芸のイメージになってしまう。地下お笑いだと「千川」「中野」あたりをイメージする人もいるかと思いますが、それだと1つの劇場のイメージが強すぎるので、そこらへんのワードを出すと情景が「街の一帯」ではなく「劇場」になってしまうんですね。


「不思議な都市計画」という曲だと、歌詞タイトルや歌詞に地名は出てきませんが、深く読めば、どこの街を差してるのかの候補は恐らく1つ(仮にそれ以上あっても3つくらい?)に絞れます。


ここの景色が好きなんだ

俺の落ちた大学が見えるけど…

山積みの道路は国の宝物

でも俺だってこの景色を愛してたい


この駅に沈みたい

あの坂を見上げたい

焦げた豆腐みたいなガードレールすら大切なんだ

曲がり角にリボンを付けて

君に贈りたいと思う


都市が変わりだす

何も待たずに

潰れた飯屋の

前で踊った


これを見てどこのことを歌っているのか分かるでしょうか。


「俺の落ちた大学が見えるけど」

「山積みの道路は国の宝物」

「この駅に沈みたい あの坂を見上げたい」

「都市が変わりだす」

…あたりがポイントで、正解は渋谷です。


「この駅に沈みたい あの坂を見上げたい」が一番重要なポイントです。駅が沈んでいる。これは要するに谷の底にあるということです。「渋谷」は名前に「谷」が入っているように、東側には宮益坂、西側には道玄坂があって、駅の部分が谷底になっています。そういう場所にある駅は都内にいくつかあるのですが「大学」「都市」というワードで学校がないところや田舎は消去でき、さらに「山積みの道路は国の宝物」という部分で国が先導して街を工事していて現場には道路をはじめとする“街の部品””が山積みにされている風景、ほぼ渋谷一択になるわけです。


正直、この歌詞から渋谷を当ててほしいというわけでもなく、そこまで深く分析してくれとも思いませんが、深く分析しようと思えばできる深みはあった方が魅力的な歌詞だとは思います(適当に言葉を並べていることが魅力になっているケースは除く)。


冒頭で挙げた「明大前」はタイトルをどの地名にしても成立します(作者の事情を知らないリスナーにとっては)。これを絵に例えると「明大前」というタイトルの絵なのに、その地名を出す意味がまったくないコンビニの壁とか松屋の看板が描かれているのに近い気がします。「固有の地名をタイトルにしているのに、そこ特有の景色が描かれていない」という意図が込められてるのであればいいというか、むしろ皮肉として面白いと思うのですが、「明大前」に関しては別にそういう曲ではなさそうなんですよね。それが良くないとハッキリ断言することは正直できないのですが、言葉の表現ってそんなに適当でいいんだっけ……と不思議な気分になり、それを紛らわすために激辛料理を食べたくなります。私のオススメの激辛料理は農心のスパイシーノグボナーラ。相当辛いです。ムシャクシャしたときはこれを食べて一瞬でも全てを忘れてみては。

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%91%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%BC-%E3%83%8E%E3%82%B0%E3%83%9C%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%A9-5%E8%A2%8B%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88-%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%9C%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%A9-%EB%84%88%EA%B5%AC%EB%B3%B4%EB%82%98%EB%9D%BC/dp/B089DZKQ2W


2022年7月3日日曜日

「独断!日本の全音楽グランプリ2022」6月の結果

【独断!日本の全音楽グランプリ2022】

<概要> ・私が2022年に日本でリリースされたすべての音源を聴きます。その中から優勝者を決めます。“日本の全音楽”強制参加型J-POP賞レースです。 ・お笑い賞レースの形式を模倣して「1回戦(日本の音楽すべて)」「2回戦(500~1200曲)」「3回戦(360曲)「準々決勝(100曲)」「準決勝(30曲)」「決勝(10曲)」と曲を絞っていき、最後に10曲の中からグランプリを決定します。要は「日本の全芸人が強制参加させられ、予選から決勝までの審査をすべて青木1人で担うM-1グランプリ」の音楽版みたいなことだと思ってください。 1カ月ごとに「2回戦進出曲(50~100曲)」「3回戦進出曲(30曲)」を発表していきます。3回戦進出曲×12カ月分=360曲の中から年末に年間ベスト100を決定します。年末までに僕の価値観、日本の音楽シーンが大きく変わる可能性もあり、それによってランキングも変動します。1月の1位だった曲が年末のベスト100に入らず、1月の30位だった曲が年末ベスト100の上位に食い込む可能性もあります。そのため月間ベスト30はあくまでも暫定的な順位です。


2019年の結果

2020年の結果

2021年の結果


<大会の意義>
毎年「○○年のベストミュージック」みたいな感じでいろんな個人・メディアがランキングを発表しています。大きく分けると「みんなの投票や意見をもとに決めているランキング」「個人が独断と偏見で決めているランキング」の2つがほとんどかと思います。

「みんなの投票や意見をもとに決めているランキング」は、ある程度知名度がないと上位には行けないため、アマチュアが誰にも知られずひっそりと発表していた曲は1位をとるのはほぼ不可能です。僕は知名度が一切ない人がひっそりと発表していた曲が、その年のNo.1の名曲だったという可能性もあると思うので、投票で決めるのはロマンがないですよね…。どれだけお金をかけて宣伝したか、本人がどれだけ熱心に外に向けてアピールしたか、とかそういった非音楽的ものがどうしても影響してしまうと思うので。でも「個人が独断と偏見で決めているランキング」は投票制と比べると、カバーできる曲の範囲がどうしても狭くなってしまう。参加曲の母数が少ないから偏りが出てしまう。

それぞれの問題点をカバーした完璧な「年間ベスト100」を作る方法は1つ。僕が日本の全音楽を聴いて決めるしかないのです。ということで日本の全音楽を聴きました。情報が一切出てこないアマチュアの方々の発表した音楽も気が狂うくらい聴きました。

<2022年6月の2回戦進出者>

※2022年6月にリリースされた日本の全音楽を聴いた結果、下記のアーティストが2回戦に進出しました。


Ace-up & blare / AKIRA / C;ON / CHiLi GiRL / CIRGO GRINCO / Cominous / Delicacy / Ellipsick / fishbowl / Gas ma' / HIKARI ZION / HO6LA / hobo◯ / IRyS / JIN CROMANYON / KIRINJI / KOTOKO / Linoa / mayuco feat. KINAKO , Shimar / Megu / MO MOMA / OOPS / Osteoleuco / pandagolff / POP ART TOWN / PUBLICS. / Reichi / SAKA-SAMA / Satoru Ono With Tenniscoats / SekimenXOD / Shinya Naito feat. ENA / STOCKMAN / T-GROOVE & GEORGE KANO EXPERIENCE / THREE1989 / Tokimeki Records / VEGARIO / VOYZ BOY / WT☆Egret / YAMADA / Yasushi Ide / YOC & 64easy / Yosukenchos feat. 結月ゆかり(結月縁) / Zinee & Melody Chubak / あんちろちー / おとぎ話 / ギリシャラブ / チョーキューメイ / ビッケブランカ / ひなりん / ブックエンズ / ブックエンズ / むしゃたろう / モーニング娘。’22 / ロッカクレンチ / わーすた / 一瞬しかない / 完全にOK / 観月ありさ / 吉岡聖恵 / 金子義浩 / 故やす子 / 荒井麻珠 / 坂本慎太郎 / 寺尾紗穂 / 室田瑞希 / 小室響 / 少女模型 / 松室政哉 / 松本英子 / 森永陽実 / 西山ケイン / 青山みつ紀 / 代代代 / 中津マオ / 朝日美穂 / 武田レイナ / 武藤大輔 / 本多春奈 / 綿貫雪 / 来栖 翔(cv.下野 紘)




2022年6月の3回戦進出と暫定順位>

30. 少女模型 - テクノ・ガンダーラ

29. CIRGO GRINCO - WITH THE RAINBOW

28. IRyS - One Step at a Time

27. 吉岡聖恵 - 凸凹 (tofubeats remix)

26. Yosukenchos feat. 結月ゆかり(結月縁) - Clap!

25. ロッカクレンチ - 簡単なことじゃない

24. 金子義浩 - 通り雨

23. KIRINJI - Rainy Runway

22. 観月ありさ - mint leaf (Seiho Remix)

21. Shinya Naito feat. ENA - カードゲーム

20. むしゃたろう - MUSHATARO WORLD

19. 故やす子 - セカンダリーなポジション (feat. 仮名)

18. モーニング娘。’22 - 大・人生 Never Been Better!

17. 綿貫雪 - 骨と骨

16. Gas ma' - Divided

15. JIN CROMANYON - Robot education-ロボットの頭の中身-

14. 松室政哉 - いい感じ

13. 朝日美穂 - スローダウン

12. あんちろちー - あんちろちー!

11. 完全にOK - ピョンちゃんおkリンピック

10. CHiLi GiRL - 都会の森

09. 一瞬しかない - わたしのプリズム

08. SAKA-SAMA - E.S.P.

07. WT☆Egret - Headphone Lover

06. POP ART TOWN - SUMMER NUDE

05. わーすた - The World Standard Dancing Club

04. OOPS - SLOW BURN

03. HIKARI ZION - NO CRY

02. Reichi - トメ・ラレ・ナイ

01. MO MOMA - Roll


■2022年の月間チャンピオン 1月:(夜と)SAMPO

2月:豊田道倫

3月:3776

4月:LEX

5月:KITACO

6月:MO MOMA













2022年7月2日土曜日

HASAMI group「metamorphosis3」解説

HASAMI group「metamorphosis3」

https://hasamigroup.bandcamp.com/album/metamorphosis3


02.TABASCO take.2

原曲があまりにも歌詞が少ないので、今回は大幅加筆してみました。「ヨントン」という言葉は最近覚えたものですが、すぐに使ってみました。「どんどんどんドンキ ここだけホーテ」は高校1年生のときに友人の間で流行ったフレーズです、一瞬下ネタかと思いますが、そういうわけでもなく意味はありません。「まったく意味がない」というところに惹かれて、今でもたまに言っています。


03.鬼胎の花 take.2

90年代のドラムマシンで作る4つ打ちをイメージしてみました。音程が一切上下しないこのベースラインは4th album「death beat & guiter」の収録曲「血」をイメージしていますが、そのアルバムを世に発表していないので、これを言ったところで誰もわかりませんし、例えこれが嘘だったとしても誰も気付かないのです。


04.MPD-妄想コンストラクション take.2

「MPD-妄想コンストラクション」は10年くらい前から、いつかもう1度作り直したいと思っていたので、この機会にアレンジをあまり変えずにリテイクしました。原曲のリリックは意味よりも語感を重視して書いたのですが、当時の作詞能力が今よりも低かったのでそこまで気持ちいいものにできませんでした。今回は歌詞を加筆したのですが、ちゃんと納得できるほど、気持ちい言葉運びができたと思います。原曲は6分超えで非常に退屈ですし、端折れるところが山ほどあったのでカットしまくりました。結果、4分台に収まりました。ダラダラ長い曲が嫌いなのに、それを自分でやっていたんですね。


05.EVERYDAY take.2

「疾走感+ザラザラノイズ+ピアノ」というHASAMI groupお馴染みの3点セットを恥ずかしげもなく使ったアレンジです。このタイプの曲はやり尽くしてしまって、「冬の朝に制服で君は」を最後にやっていないのですが、軽い気持ちで作れるmetamorphosisだったらやっちゃうよといったところです。原曲のほうが7倍くらい好きです。


06.もう一度学校に行きたい take.2

もともとの「もう一度学校に行きたい」は未発表曲なのですが、一応完成はしていて、僕は普段もよく聴いてるので、それを作り直りました。それはもはや新曲なのではという声もあるとかないとか。最小限のフレーズをひたすらループさせて、音もとても聞きづらくしてみました。これは「音が悪い」ではなく「聴きづらい」のです。「聴きづらい=悪い」わけではありませんので、「HASAMI groupは音質が悪い」みたいなことを軽々しく言わないように。


07.毒リズム take.2

Perfumeの「ポリリズム」がリリースされたのが2007年、HASAMI groupの「毒リズム」が発表されたのが2008年らしいです。14年後、30歳の俺が「毒リズム」をリテイクしているとは当時高校1年生の自分は思いもよらなかったでしょうし、もしそれを知ったら相当気持ち悪がるでしょうね。パロディにも旬がありますが、旬を過ぎたときにやるパロディが一番面白いです。しかし、今回の「毒リズム」」に関しては時間が経ちすぎて、面白いのか、面白くないのか、わからなくなっていますね。


08.エグすぎる take.2

原曲はリズムをかなり工夫してこだわってので、take.2ではまったく工夫がない、一番しょうもない4つ打ちにしてみました。「原曲を超えない」というmetamorphosisのコンセプトにしっかり乗っ取った「劣化バー(劣化+カバー)」だと思います。ご時世柄、新宿でお笑いを観ることもすっかり減ってしまいました。新宿バティオスで笑いすぎてひっくり返ったら、ドミノ倒し的にパイプ椅子が崩れて大惨事になったりするんですかね?


09.Overheater take.2

2019年にライブをやったときのアレンジをなるべくそのまま収録してみました。原曲はサビの部分の歌詞があまり気に入っていなかった(というより意味わからない)ため、書き直しています。特に悩むことなく、「I Love Youを連呼すればいいや」と1秒で決まりました。瞬発力は大事です。ライブをとにかく盛り上げようとしていることが伝わってくるアウトロのアレンジも微笑ましいです。


10.おとぎばなし take.2

青木龍一郎 作曲活動20周年記念EP「雪の日」は個人的に大変気に入ってるEPなのですが、反応が各段に少ない作品でもありました。実はこの作品は6曲すべてを1日で作りました。構想があったわけでもなく、頭の中ですら1ミリも何も考えていない中から1日で作ったのです。途中、昼寝もしたので実質5時間くらいで作られたといっていいでしょう。公開当時はそのことを売りにしようかと思ったのですが、「短時間で作られた曲」というバイアスがかかってしまうため、特にその事実は公表しませんでした。


11.Nomiya Kentaro Is My Angel take.2

原曲はリズムや音使いが大変気に入っているのですが、そのよさを全て排除し、チープなポップへと悪しき変貌を遂げたのがこのリテイクです。この気持ち悪いボーカルは「スナックから漏れ出てくる酔っ払いのおっさんの歌回し」をイメージしています。ヘロヘロで声がすぐ上ずっちゃうんですね。ちなみに、これをカッコよく極めると晩年の萩原健一になります。2番に入ると急に元気がなくなっているのも注目ポイントなのですが、単純に飽きてしまっていて、「早く終わらないかな」と思いながら歌っています!


12.GALAXY HIGHWAY take.2

原曲は「ダサいと思うことをすべてやる」というコンセプトで作られました。具体的なポイントは「ダサすぎるリフ」「ひねりの1ミリも無いリズム」「噛んだりズレたりしても撮り直ししない適当一発録音」「細かい部分を作りこまない」などです。ただ、ダサさを突き詰めると逆に魅力が生まれてきてしまうんですね。なので今回はさらにその一歩先をいくため、「ダサくもカッコよくもない一番微妙なアレンジ」を目指してみました。「ダサい」と「カッコよさ」のちょうど中間を行く、リアクションの難しい曲に仕上がっているかと思います。これは高等技術ですね。


13.コマス癖 take.2

こちらも12曲目と同じく「ダサくもカッコよくもない一番微妙なアレンジ」を目指してみました。まさに実験ですね。これはボーカルを絶妙に心地悪い音量の小ささ、そして聴きづらさにするという技を使ってみました。例えばボーカルの音を小さくするのは初期Number Girlのようなサウンドだと非常にハマるのですが、このくらいスカスカなトラックでやると、なんだか居心地が悪いです。


14.Internet Lovers take.2

ザラザラノイズパンク系の音は「Sweet Pite」「Dude Kids」「ナイトウォーク」「首都J」と進化させてきて、「カズマの面白FLASH倉庫」を最後にやらなくなったのですが、それを久々にやってみました。初期HASAMI groupの雰囲気を存分に味わえるかと思います。味わって得をするものでもないのですが…。


15.特盛!万引きイスカンダル take.2

いわゆる「チョップド&スクリュード」をユーロビートにかけたらどうなるのかという実験的な曲にしています。別にチョップドはしてないのですが。僕がチョップド&スクリュードを知ったのは確か小学生の頃で、DJ ScrewではなくDJ Michael “5000” Wattsのミックステープで始めれ触れた記憶があります。ユーロビートはまさにその頃に流行っていた音楽で、アンダーグラウンドなヒップホップにハマっていた小学生の僕は「なんて低俗な音楽なんだ」と毛嫌いしていました。その20年後、自作のユーロビートをチョップド&スクリュードするとは思いもよらなかったことでしょう。おい高校生の龍一郎、僕、ここまできたよw


16.カニ take.2

HASAMI group史上No.1の駄作ということになっている「カニ」をノリノリな感じにアレンジしてみました。「metamorphosis3」は「軽薄」が全体的なテーマになっていまして、それを特によく表していると思います。最近の邦楽は軽薄さを避けようとしすぎていて、「舐められないための音楽」「すごいと思われるための音楽」という側面がより強くなっている気がします。サウンド的には情報量の多さや音の圧で攻める系ですね。black midiはカッコいいですが、これからの日本には「浅いblack midi」「分かってない人がやっているblack midi」のような音楽が増えていくと予想されます。そんな中、軽薄さを一切恐れない音楽をやってる奴が一番怖くて強いんじゃないかと思っていて、例えば「カニ」のような曲を自信満々に発表する奴が今一番ヤバいんじゃないでしょうか。皆さんはどう思うか。


17.LADY take.2

こちらも2019年のライブで演奏したアレンジです。ライブに来てない人は信じられないかと思いますが、このイントロが流れた瞬間、「待ってました」の拍手と歓声が起り、サビでは(やや控えめの)LADYコールが発生したんですね。HASAMI groupのリスナーはそういうことをするイメージがなかったので、ひどく驚きました。こんなグループを好きになる人がはどう考えても元気が無い人たちという感じがしますが、現実で見ると結構みんな元気なんです。つらいことがありすぎて逆に元気になっちゃった系の人たちなんでしょうか?


18.不思議な都市計画 take.2

こちらも未発表曲として自分だけでひっそり聴いていた「不思議な都市計画」が、ガラッとアレンジを変えて収録されることとなりました。歌詞も改善の余地ありだったので、思い切ってすべて変えました。これはもはや新曲なのではないかという声もありますが、そんなことを言う人は乳母車に乗せて崖からエイッ。