日々、世の中のさまざまな事物に感動しながら過ごしていますが、最近感動したのは、にぼしいわしのロケのうまさでした。
テレビ大阪の「片っ端から喫茶店」という喫茶店を紹介するロケ番組に、にぼしいわしが出演していまして、2人がテレビでロケをしている姿が珍しかったので、思わず観てたのですが、意味不明なくらいロケがうまいんです。うますぎて面白い。若手芸人とは思えない安定感・安心感があり、挟み込まれる笑いの塩梅もちょうど心地よくて、妙に癒される。ずっと観てられる。テレビ番組でがっつりとロケをするのは恐らく初めて(?)のはずの2人が、何故こんなにスマートで小慣れているのかは全くの謎なのですが…。
※TVerやYouTubeでいろいろ観れます。
最近の芸人のロケの主流は「変なことをする」です。用意してきた奇怪な小道具を披露したり、奇行をして店の人を戸惑わせたり、VTRの濃度を上げるためにとにかくボケを詰め込んだり。これはYouTube全盛期になったことで、「テンポ」と「インパクト」が重視されている流れに呼応したものだと思います。ゆっくりボーッと見れることよりも、一瞬で心を掴んでそのままいかに飽きさせないかに重点が置かれた結果、ペンギンの池に飛び込んだり、店頭の唐揚げに爪楊枝刺したり……。それが今の主流になっているからこそ、ロケ経験の浅い若手芸人たちもこぞって“変なこと”をして爪痕を残そうしています。これは正直、面白いです。スリリングだし、ゴリゴリのお笑いを見てる感じが楽しいし、基本的には僕も好きです。
ただ、そればかりになってしまうと、別のものが欲しくなってしまうのが人間です。いつまでもラーメン二郎ばかり食べていられない。
もう1つ、近年のロケ番組にうっすらと「うーん」となっていることが、「街」や「街の人」が無視されすぎてるところです。「街」や「街の人」をただの“背景”にした上での大喜利合戦みたくなってしまっている感があり、その敬意の無さが少し残念だなと思っていました。
「片っ端から喫茶店」を観ていてすごくうれしかったのが、番組の制作サイドも、にぼしいわしも「店の人」と「街」にすごく敬意があったことでした(そもそも番組の性質がまったく違うのですが、そこは今回はツッコまないでください)。にぼしいわしはネタを見ればわかる通り、むしろ奇怪や発想やイカれたボケを得意としているタイプの芸人なのですが、それを封印しても「街」への“まなざし”からちゃんと面白さが溢れているし、目の前の景色や人に真っ向から向き合っている。でもただの真面目にはならず、ちゃんと面白くなっている。これ、すごくタモリ的で素敵な感じがしました。ジャンクフード的なコンテンツが飽和したこと、「タモリ倶楽部」終了したことなどが重なり、ブラタモリやタモリ倶楽部のような番組を担える人の価値が今後は高まっていく気がします。
今、思い返しても謎なのですが、「タモリ倶楽部」の、ちゃんと面白いのに、それだけじゃなくて観てるだけで癒される感じはなんだったのでしょうか? うまく分析できないまま、番組は終わってしまいました。味わうことができなくなってしまったあの感覚に近いものを味わえたのが、にぼしいわしのロケでした。ネタはイカれてるのに、ロケは癒される。そこになんだか「Yeah!!」となってしまいました。