2021年3月13日土曜日

「差別に関して」に届いたコメントに関して

先日、このブログで「差別について」という面白テキストを書きました。
今からするのは、この記事に関する話なので、読んでない人はまずそちらをお読みください。

すごく短くまとめると↓こういうことです。

・節分のときにTwitterで「鬼なんて、ぶっ殺してやる 牛刀でギタギタに引き裂いて、小便をかけろ」「福はどうぞ我が家にお越しください」とか言っちゃったけど、「鬼のモデルは漂流してきた西洋人」とかいう説を持ち出すとやや差別的な雰囲気が漂っていたな。鬼さん、ごめんなさい。
・架空の生き物である鬼にも配慮するなんて過剰すぎるでしょうか? いや無意識な差別をなくすためには過剰すぎるくらいがちょうどいいのではないのでしょうか。

正論を言ってるつもりはなく、あくまで個人的な考えです。
するとこのブログには大変珍しく、記事に見知らぬ方からコメントがついていたのです。それは以下のようなものでした。

鬼は人間ではありません。存在しないのです。自分の事を鬼であると自認する人間は自嘲以外の意味では基本的にいません。要するに、差別が問題になるのは当事者やその関係者が騒ぎ立てるからであり、鬼を差別したところで、鬼が騒ぎ立てる事はないので、鬼は思う存分差別してよいと思います。

1回読んだだけでは若干何を言っているのか意味が分からなかったのですが、意図を汲み取ろうとしながら何度も何度も読み直しているうちに、なんとなく「こういうことを言いたいのかな」という意図は汲み取れてきて、「そうですね」と思う部分も、「違うのでは」と思う部分も出てきました。皆さんも上のコメントを10回くらい読み直して、なんとなく「こういう意味かな」というのを汲み取ってみてください。まずは個人的にどう思ったか考えてみてください。その上でこの先の文章を読み進めてほしいです。


この文章を見たときに率直に思ったことは「わかりにくいな」でした。ごめんなさい。途中で出てくる「要するに」のあとが要していない気がしますがどうでしょうか。「何を言い出したんだこの人は」と不安になっているところに「要するに」が出てきたので、「要してくれるんだ!」と安心したのに、急に論が別方向に飛躍したので余計不安になってしまいました。ということで、このコメントが何を言いたいのか、丁寧に丁寧に解きほぐしていこうと思います。


このコメントをちゃんと理解するために①
「途中で世界観が変化していることを見抜け」

この文章を3つに分解するとなぜわかりにくいのか見えてくると思います。前半、中盤、終盤で世界観が変化しているのです。世界観とは「世界とはこういうものだ、その中で人はこう生きるものだという、世界・人生に対する見方」です。

●前半
「鬼は人間ではありません。存在しないのです」
鬼が完全にいないことになっている。

●中盤
「自分の事を鬼であると自認する人間は自嘲以外の意味では基本的にいません」
鬼が(基本的に)いないことになっている。※いる可能性が出てきている。

●終盤
「鬼を差別したところで、鬼が騒ぎ立てる事はないので、鬼は思う存分差別してよいと思います」
鬼がいることになっている。

この短文の中で3回、別の世界観に移行しちゃってるんですね。合間に何も補足がない。だから何度か読み直し、合間を自分で補足しながら、この人が何を言ってるのかを汲み取る必要がある。丁寧に読めばそこまで変なことは言っていないのですが、単純に初見だと厳しい。


このコメントをちゃんと理解するために②
「おかしな断定を見抜け」

シンプルにおかしい記述があるので、余計理解するのを鈍らせます。「いるはず」「あるはず」の存在を「ない」と断定した状態で話が進んでいるので基本的に全体が破綻しています。特に顕著なのは以下の2つの部分です。

・自分の事を鬼であると自認する人間は自嘲以外の意味では基本的にいません
他人から「鬼」と言われる人もいるのでは? あと「基本的に」と言っているけど、差別のことを語っているときに何故「例外」を外して語っているのか? 差別は例外にされてしまった人々の問題なのでは?

差別が問題になるのは当事者やその関係者が騒ぎ立てるからであり
当事者や関係者が声を挙げられず黙っているけど密かに嫌な思いをしている差別問題もあるのでは?


このコメントをちゃんと理解するために③
「最後の文章の意味を限界まで汲み取れ」
差別が問題になるのは当事者やその関係者が騒ぎ立てるからであり、鬼を差別したところで、鬼が騒ぎ立てる事はないので、鬼は思う存分差別してよいと思います。

この文章は三段論法です。3つに分けてそれぞれを検証していきます。
①②が前提、③が結論です。

①差別が問題になるのは当事者やその関係者が騒ぎ立てるから
②鬼を差別したところで、鬼が騒ぎ立てる事はない
③鬼は思う存分差別してよい

まず
①差別が問題になるのは当事者やその関係者が騒ぎ立てるから
→先ほども言いましたがこの前提が成立してないです。当事者や関係者が声を挙げられず黙っているけど密かに嫌な思いをしている差別問題もある可能性もあり、言い切りにできないはずのことを言い切りにしています。

②鬼を差別したところで、鬼が騒ぎ立てる事はない
→「途中で世界観が変化していることを見抜け」の章でも言及しましたが、この鬼がどの世界観での鬼を言っているのかがわかりません。「ファンタジー上の鬼」のことなのか「自分の事を鬼であると自認する人間」のことなのか。
汲み取ろうとすると「騒ぎ立てる事はない」と言っているので、恐らくファンタジー上の鬼だと思います。つまり「鬼はこの世にいないんだから、いくら差別しても騒ぎ立てない。だって存在しないんだもの」ということですね。


以上のことに配慮した上で、元のコメントを分かりやすくすると下記のようになると思います。

【前提1】差別は当事者や関係者が騒ぎ立てるから問題になる
【前提2】鬼はこの世にいないからいくら差別しても騒ぎ立てないから問題にならない(悲しむ人が出てこない)
【結論】だから鬼は差別していい

ようやく何を言ってるかがわかってきました。
その上で、この主張が正しいかどうかは僕はわかりません。
「完全に正しい」「完全に間違っている」ということはないので、
各々の立場や思想によって受け取り方は異なるでしょう。

それを踏まえて、ここから下は個人的に思ったことです。
ここからがようやく「コメ返し」です。
印象論的な話や個人的な好き嫌いの感想も含まれます。

個人の感想①
「騒ぎ立てる」は無い
引っかかったのは「差別が問題になるのは当事者やその関係者が騒ぎ立てるから」という文章です。「騒ぎ立てる」って表現、すごく嫌な感じしないでしょうか。「差別当事者が差別について問題提起をする」ことを「騒ぎ立てる」と表現する感覚ってどうなんでしょうか。書き手の心のどこかに「差別を問題提起する人たち」に「ギャーギャーうるさい人」というイメージがないと「騒ぎ立てる」は使わないんじゃないかなと思っちゃいます。これは言葉狩りではありますが、しっかり狩らねばという思いにも駆られました。

個人の感想②
「問題にならないからいい」という考えについて
もう1つ問題視したいのは、またもや「差別が問題になるのは当事者やその関係者が騒ぎ立てるから」の部分です。ここが「鬼は思う存分差別してよい」という結論を支える理由になっているのですが、「騒ぎ立てる当事者がいないからいい」「問題にならないからいい」という主張じゃ流石に支えられない。
「問題にならない」ことって、それ自体が問題なのではないでしょうか。差別を無くす第一歩ってむしろ「問題にすること」ですよね。「大多数が気付かなかったけど、実は密かに少数の人々が悲しい思いをしている」みたいな潜在的な問題を顕在化していくことが大事だと思います。
コメントの根底にあるのが「問題にならないからいい」という思想なので、それが差別当事者の気持ちを考えることとは真逆の考え方であり、そんな人が「差別は思う存分していい」とか言ってしまうのは恐ろしいですよね。

個人の感想③
「鬼がいたらどうしよう」という想像力を無視すな
全世界で何兆回も言われていることではありますが、自分の中の差別意識を無くすのに必要なのはやはり想像力です。「自分は傷つけるつもりなく言ってるけど、傷つけるかもしれない」という想像力。それをパロディとして過剰に言ったのが「鬼が傷ついたらどうしよう」という内容の文章だったんです。その上で「考えすぎることはいいことだと思う。特に差別に関しては死ぬほど敏感に考え続けるくらいでちょうどいいと思う」と僕は言ったわけです。それに対して「鬼はいないのです」と言われてしまったらビックリしてしまいます。Twitterで「生まれ変わったら猫になりたい」とツイートしたら、知らない人から「生まれ変わりません。死んだら終わりです」とリプが飛んでくるのと似た感じです。やっぱり戸惑いますよね。


これらが僕の思ったことの一部です。どちらが正しいのかという結論を追求するつもりはなく、ただの感想ですので、フワッとしていてすみません。「反論」ではなく「対話」っぽくしたいので敢えてそうしています。以上、「130文字のコメントに3700文字でコメ返ししてみた」でした。

2021年3月3日水曜日

「ノリアキはわざとらしすぎる」という方に

今年、奇跡の復活を遂げたノリアキ。
確かに観ていて面白いのですが、
面白ければ面白いほど「これはコントである」という現実を認識させられ、ふと寂しくなります。
そして「本物を見たい」と欲が出てきてしまうのです。

本人が一切狙ってない「ノリアキのリアル版」って居ないのでしょうか。
そう思った矢先に出会った曲がsolohighlifeの「everyday」でした。

★solohighlife「everyday」のすごさ
・当たり前のように情報が一切無い。
・ジャケットの画質が不自然に粗い(なぜか神社らしき場所で撮影されている)。
・「Welcome to the darkside…Black Rose…」という女性のボイスサンプルで始まる。
・「Black Rose…」が頻繁に登場しすぎる。
・「稼ぎまくるハスラーのように」みたいなことを歌っているのに、トラックが感傷的で歌詞と合ってない。
・「エビデイ」の「イ」の部分を伸ばして「エビデイ~イイ」と歌う部分がある。

…などなど上げるとキリがありません。
とりあえず、歌詞を書き起こしたので
歌詞をじっくりと味わいながらこの曲を聴いてほしいです。
(歌詞の情報もないため実際の表記が異なるところもあるかもしれません。すみません)


solohighlife「everyday」
稼ぎまくるハスラーのように
遊びまくるプレイヤーのように
everyday everyday everyday
稼ぎまくるハスラーのように
遊びまくるプレイヤーのように
everyday everyday everyday

いつだってそうさ 俺らは夢のようなライフを生きている
24時間 7日間 365日
好きなこと以外したくねーよ
それ以外には興味ねーよ
無駄なことしてる時間ねーよ
今日という日はもうこねーよ

稼ぎまくるハスラーのように
遊びまくるプレイヤーのように
everyday everyday everyday
稼ぎまくるハスラーのように
遊びまくるプレイヤーのように
everyday everyday everyday

稼ぎまくるハスラーのように
遊びまくるプレイヤーのように
everyday everyday everyday
稼ぎまくるハスラーのように
遊びまくるプレイヤーのように
everyday everyday everyday

24時間 7日間 365日
好きなこと以外したくねーよ
それ以外には興味ねーよ
無駄なことしてる時間ねーよ
今日という日はもうこねーよ

稼ぎまくるハスラーのように
遊びまくるプレイヤーのように
everyday everyday everyday
稼ぎまくるハスラーのように
遊びまくるプレイヤーのように
everyday everyday everyday





やっぱり「本物」って感じがします。
ノリアキのようにエンターテイメントとして完成されていないので、
バッチリな笑いどころは用意されていませんが、
本物が放つ「繊細な魅力」「生々しさ」「地味な異様さ」「じっとりとしたヤバさ」みたいなものは十分に感じられるはずです。

僕が「everyday」に関して(皮肉とか抜きに)マジですごいと感銘を受けたのは

1番と2番の歌詞がほぼ同じだけど、
2番は、1番の冒頭「いつだってそうさ 俺らは夢のようなライフを生きている」を削って詰めているので最後に8小節分余っている

ということです。文章がわかりにくくてすみません。
下に分かりやすく図示しました。

1番
①いつだってそうさ 俺らは夢のようなライフを生きている
②24時間 7日間 365日
③好きなこと以外したくねーよ それ以外には興味ねーよ
④無駄なことしてる時間ねーよ 今日という日はもうこねーよ

2番
①24時間 7日間 365日
②好きなこと以外したくねーよ それ以外には興味ねーよ
③無駄なことしてる時間ねーよ 今日という日はもうこねーよ
④-

1番にあった「いつだってそうさ 俺らは夢のようなライフを生きている」の部分が
2番では削られており、その代わり②にあった「24時間 7日間 365日」が1個前にズレて①に入ります。
当然そのまま1個ずつズレていくので、2番の④に空白ができてしまう。
せめてここで新たなフレーズを追加すればすべて埋まるのですが、
「everyday」では空いた部分は空いたままで放置されています。

歌詞が早めに終わったら、そのまま終わりにしていいんだなと気付かされます。
「言いたいことは言い終わったけど、曲の尺はまだある」というとき、
常人なら余った尺を埋めようとさらに歌詞を考えると思うんですが、よーく考えると、そんなことする理由って別にないんですよね。
「歌詞で言いたいことの文量」と「曲の尺」が一致することなんてほとんどないんじゃないかと。
我々は固定概念に囚われていることによって、歌詞に蛇足を加えたりしてるんじゃないかと。
実際はマイケル・ジャクソン「スリラー」のMVと同じスタイルでいいわけですよね。
曲終わってるけど、映像まだ続いてるみたいな。

このスリラースタイルの話は、現代の労働問題にも通じてると思うんです。
「作業が早めに終わったら帰っていい」みたいな当たり前なことができない会社が多い。
作業量ではなく労働時間を定めるから。

J-POPも同じ問題を抱えているといっていいでしょう。
歌詞の文量を曲に尺に合わせようとしすぎて自由な表現ができていない。
早く歌い終わったら、黙ってていいんです。曲が続いてても。
自分も今度、そんな曲を作りたいと思っています。

2021年3月2日火曜日

「日本の全音楽グランプリ2021」2月の結果

 【日本の全音楽グランプリ2021】

<概要>

・私が2021年に日本でリリースされたすべての音源を聴きます。その中から優勝者を決めます。“日本の全音楽”強制参加型J-POP賞レースです。

・お笑い賞レースの形式を模倣して「1回戦(日本の音楽すべて)」「2回戦(500~1200曲)」「3回戦(360曲)「準々決勝(100曲)」「準決勝(30曲)」「決勝(10曲)」と曲を絞っていき、最後に10曲の中からグランプリを決定します。要は「日本の全芸人が強制参加させられ、予選から決勝までの審査をすべて青木1人で担うM-1グランプリ」の音楽版みたいなことだと思ってください。


今年は1カ月ごとに「2回戦進出曲(50~100曲)」「3回戦進出曲(30曲)」を発表していく形式となりました。3回戦進出曲×12カ月分=360曲の中から年末に年間ベスト100を決定します。年末までに僕の価値観、日本の音楽シーンが大きく変わる可能性もあり、それによってランキングも変動します。1月の1位だった曲が年末のベスト100に入らず、1月の30位だった曲が年末ベスト100の上位に食い込む可能性もあります。そのため月間ベスト30はあくまでも暫定的な順位です。


2019年の結果

2020年の結果




<2021年2月の2回戦進出者>

※2021年2月にリリースされた日本の全音楽を聴いた結果、下記のアーティストが2回戦に進出しました。


BmF / C1rrus / CARTHIEFSCHOOL / CASANOVA FISH / chanoma / CHEAP CREAM / Daam$ / DAFTY RORN / Devil ANTHEM. / DIALOGUE+ / DOKIDOKIKYUNUKYUNURECORDS / Eco Skinny / eldaja / ERA & DJ HIGHSCHOOL / King能 / KOMONO LAKE / LADY'S ONLY / LAIKA DAY DREAM / LIVE / Mackor / Maica_n / mao. / mika hiyama / mono Hz / NEW ENDO / nkn / QiNARI / SAKUra / SARD UNDERGROUND / SHIEGO / SIMON / Svg Oxxx / tipToe. / Vraid Bunches / week dudus / yuma yamaguchi / Zombie Powder / アップアップガールズ(2) / あべみかこ / イヴにゃんローラーコースター / いしぐろしゅーや / いろは / オジキ / かめりあ / りあら / 伊藤ゆうき / 花降る日々、 / 金子義浩 / 軽井さん / 小林愛香 / 水科みり / 西尾幸司 / 蒼木るい / 田中未希 / 堂島孝平 / 楠美月 / 文月フミト / 木戸口奈緒 / 油揚げ / 有栖川レイカ / 雄之助 / 陸王 / 和氣あず未




2021年2月の3回戦進出と暫定順位>

30. NEW ENDO - NO Fee!

29. Vraid Bunches - ガラス越しの秘密

28. SHIEGO - Keep on wishing, Carry on

27. りあら - いちごタルトが食べたくて

26. 和氣あず未 - 安曇野小夜曲

25. 有栖川レイカ - ファビュラスTOKYO

24. ERA & DJ HIGHSCHOOL - Airplane

23. mika hiyama - 真っ白な雪

22. Mackor - Fat Chubby Pussycat

21. 金子義浩 - 冬のはじまり

20. CHEAP CREAM - Kissing game (so sweet mix)

19. 小林愛香 - Sunset Bicycle

18. イヴにゃんローラーコースター - 緊急♡事態♡宣言中♡

17. tipToe. - ホワイトピース

16. 楠美月 - Correct

15. あべみかこ - 友達でいようよ

14. 油揚げ - 北京ダック (Beatbox Only)

13. Zombie Powder - サイテーな未来の為 最高にイカした今を

12. eldaja - mujintou

11. CARTHIEFSCHOOL - tokakutaihou

10. 陸王 - big love

9. Vraid Bunches - UFOです。

8. CASANOVA FISH - 恋がしたい

7. LADY'S ONLY - Keep It Real (feat. 星宮とと)

6. LADY'S ONLY - ex-senpai (feat. 星宮とと)

5. アップアップガールズ(2) - ぱーれぇ~

4. chanoma - 甘い衝動

3. BmF - Moving on

2. SARD UNDERGROUND - ブラックコーヒー

1.SAKUra - 漕ぎ出せ♪ショコラティエ ~これって恋ですか?~